
医療トピックス
糖尿病は治る時代?完治した人はいる?治る確率やステージ・寿命を解説
糖尿病は治る時代?
糖尿病になりかけは治る?と言われる理由や糖尿病のステージの症状、糖尿病が完治した人はいるのか、治る確率や寿命についても解説します。
糖尿病になったら気をつけることや糖尿病の基本治療(食事・運動・薬)についても紹介するので、健診などで糖尿病予備軍(糖尿病境界型)と言われた方は生活習慣を見直す参考にしてください。
目次
糖尿病は治る(≒寛解)時代?糖尿病になりかけは治る?

「糖尿病は一生治らない病気」と思っている方も多いことでしょう。
糖尿病は、血液に含まれる糖分(血糖)が多くなる病気で、糖尿病にはいくつか種類があり、大きく分けると1型糖尿病と2型糖尿病があります。
全体の90~95%は2型糖尿病で、一般的に「糖尿病」と言うと2型糖尿病を指しますが、初期は無症状で、進行して重篤な病気を引き起こすことからサイレント・キラーとも呼ばれます。
糖尿病は、長期間患っていると治すことが難しいと言われており、血糖値が高い状態が続くと血糖値を下げるホルモンであるインスリンを分泌する膵臓が酷使され、やがてインスリンは出なくなります。インスリンがなくなると血液中のブドウ糖を細胞に取り込めなくなるため、合併症などのリスクも高まり、健康な体に戻ることが難しくなります。
しかし、肥満や運動不足により2型糖尿病を発症した方が早期に積極的な治療を行うことにより、健康な人と同じように検査や治療が不要になる寛解(かんかい)の状態までもっていくことが可能であることが最近わかってきました。
「糖尿病になりかけは治る(≒寛解)」のかと言うと、とくに、太ったことで糖尿病を発症した方は痩せることで内臓脂肪が減少し、血糖値が正常値になり、膵臓の働きが改善される可能性があります。

健診で「血糖値が高い」「糖尿病の疑いあり」と言われた方は、糖尿病予備軍、あるいは糖尿病境界型という状態で、糖尿病の前段階に当たります。この初期段階で進行を抑制できれば、検査や治療の必要がない寛解(≒治る)状態になるので、早期に生活習慣を見直すことをおすすめします。
糖尿病の判定の一つの目安になるのは、空腹時血糖値および75gOGTTによる判定区分です。75gOGTTとは、75gのブドウ糖が溶けた液体を飲み、その後の2時間まで血糖値や血中インスリン濃度の変動を測定する検査です。

糖尿病は自覚症状が少ないため、早期発見が重要です。
肥満の方・高血圧の方・コレステロールや中性脂肪が高い方・空腹時血糖値が高い方・HbA1cが5.2%以上の方・食後低血糖症が疑われる方などは、75gOGTTの検査を受けてみることをおすすめします。
糖尿病のステージとは?ステージ1~5で現れる症状を解説

糖尿病になると腎臓の機能低下が進行し、様々な症状が出てきます。糖尿病でステージと言われるのは、糖尿病の合併症の一つの糖尿病性腎症の進行具合を指しており、糖尿病腎症には5つのステージ(病期)があり、腎機能とたんぱく尿が指標になっています。
腎臓は左右の腰のあたりにある自分の握りこぶしほどの大きさでソラマメのような形をした臓器で、主に下記のような働きがあります。
- 血液中の老廃物をろ過して尿をつくる
- 血圧を調整する
- ホルモンをつくる
- 体内のバランスを調整する
糖尿病になると腎機能の低下とともに体内の調節機能がうまく働かない状態になり、様々な症状が出てきます。
糖尿病性腎症のステージ | 症状 | 体内の状態 |
---|---|---|
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・自覚症状なし | ・血糖値が高い ・腎機能30以上(eGFR) |
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・自覚症状なし | ・血圧が上昇 ・微量のアルブミン(30~299mg/gCr) ・腎機能30以上(eGFR) |
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・むくみがでる ・息切れ ・食欲不振 ・尿が泡立つ ・胸苦しさ など |
・血圧は上昇 ・アルブミン(300mg/gCr以上) ・持続性たんぱく尿(0.5g/gCr) ・腎機能30以上(eGFR) |
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・倦怠感 ・手足の痛み ・かゆみ ・貧血 ・顔色が悪い |
・腎機能30以下(eGFR) ※腎不全の判定は、尿アルブミン値の程度にかかわらず、GFR 30 mL/分/1.73m²未満 |
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・筋肉のしびれ ・痛み ・硬直 ・顔色が悪い ・嘔吐 ・発熱 |
・透析療養 ※腎臓がほとんど機能せず腎不全の状態 |
ステージ1では自覚症状がなく、血糖値が高い症状が現れるだけなので糖尿病の発症に気が付かない方が多いでしょう。この段階で血糖コントロールや健康的な食生活を行えると進行を防ぐことができます。
ステージ2では尿中から微量のアルブミン(たんぱく質)が検出されます。この段階でも自覚症状はないですが、血圧が上昇する場合があります。厳格な血糖コントロールを行えば検査値が正常に戻る可能性があります。
ステージ3になると多くのアルブミンが尿中に出るようになり、腎臓の機能は通常の半分程度に低下した状態になります。機能低下に伴い血圧が上がり、高血圧がさらに腎臓の機能を低下させるという悪循環に陥り、様々な対策を行う必要性が出てきます。
ステージ4ではこれまで以上に様々な症状が出てくるようになり、尿毒症の症状が現れる場合やインスリン排出の低下によりインスリン分泌促進薬かインスリン治療を受けている場合は低血糖が起こることがあります。腎臓の機能が30%未満まで低下した状態で、透析導入をするかどうか判断することになります。
ステージ5では腎臓がほとんど機能していない腎不全の状態で、透析療法や腎移植などの治療が必要になります。透析療法は生涯にわたって続けていかなければなりません。
このように糖尿性腎症はステージが進むにつれ、深刻な状況になってきます。早期発見のためにも定期的に健診を受けて早期に対策をすることをおすすめします。
糖尿病が完治した人はいる?治る確率は?

糖尿病は「治らない病気」と言われていましたが、2023年の新潟大学の研究調査によると、ある一定の割合で寛解になる方がいることがわかりました。
新潟大学の研究グループが、全国の糖尿病専門施設に通院中の2型糖尿病患者を対象に、臨床データを分析したところ、糖尿病になったものの血糖値が正常近くまで改善し、薬が不要になる寛解の状態になる方がいることが明らかになりました。また、寛解になる傾向もわかり、1年の減量幅が大きい人ほど寛解が起こりやすいということがわかりました。
なお、寛解する人の割合としてはこの調査では、100人に1人という結果だったため、1%の方は糖尿病が治る(≒寛解)可能性があると考えてよいでしょう。
新潟大学の研究結果によると、寛解が起こりやすい人には下記のような傾向がありました。
- 糖尿病と診断されて間もない方
- HbA1c値※が低い方
- 肥満度(BMI)が高い方
- 1年間の体重減少が大きい方
- 薬物療法を受けていない方
上記の調査結果から、糖尿病が発症しても早期に積極的な食事の改善や運動に取り組み、減量することで健康状態を取り戻せる可能性があるということです。
糖尿病の寿命は?長生きできるかについて解説

日本糖尿病学会が2011~2020年の10年間、日本人の糖尿病を発症した方の死亡年齢を調査したところ、下記のような結果が出ました。糖尿病患者は平均寿命より男性で7.2歳、女性で10.3歳もの差があることがわかりました。
男性 | 女性 | |
---|---|---|
糖尿病患者の死亡年齢 | 74.4歳 | 77.4歳 |
平均寿命(2020年) | 81.6歳 | 87.7歳 |
しかし、この調査は前回の結果と比べると男性3歳、女性2.2歳の寿命が延びており、糖尿病治療の進歩が認められるとのことです。
現在も糖尿病の研究は進み、新薬の開発もされていることから、さらに糖尿病患者の寿命が延びることが期待できます。
糖尿病になってしまったらどうする?糖尿病になったら気をつけることを紹介

糖尿病の初期症状は病気という自覚がない方も多く、健康診断で「血糖値が高い」と言われた程度ととらえている方も多いことでしょう。
しかし、糖尿病は恐ろしい病気で、放っておくと進行し、合併症を引き起こして死に至ることもあります。また、糖尿病患者はがんリスクが一般の方と比べて20%も高いと言われます。
糖尿病の初期は症状がないことが多く、進行すると症状が出てきます。
糖尿病の症状をまとめたので、下記のような糖尿病の症状が出たときには早めに受診してください。

●尿が多い
高血糖により尿糖の排泄量が増えると、尿の量や回数が増えていきます。頻尿とは1日に8回以上トイレに行くことをいいます。
●喉が非常に渇く
高血糖からの頻尿で尿量が増えることにより、喉がよく渇き、水分を摂ろうとします。
●疲れやすい
体内でインスリンの作用不足が起こり、糖分がエネルギー源として細胞に充分取り込まれない高血糖の状態になって、栄養や酸素が体の隅々まで行き渡らないため、体が疲労を感じやすくなります。
●空腹感
糖分がエネルギー源として充分細胞に取り込まれないため、体がエネルギーを必要として空腹を感じることがあります。
さらに糖尿病が進行すると、手足にしびれや痛みを感じる、目がかすむ、視力が低下する、足がむくむなどの症状が現れてきます。
糖尿病の検査は内科で受けられます。自覚症状がある方・詳しく検査してほしい方は糖尿病の専門医がいる医療機関を受診することをおすすめします。
糖尿病と診断されたら、しっかりと向き合って治療することが重要ですが、糖尿病予備軍や糖尿病境界型であれば、生活習慣の改善により、糖尿病の発症や進行を抑えることができるので、下記の生活習慣を意識してみましょう。

- 食事はバランスよく、適量食べる
- 散歩など有酸素運動をする
- 体重を増やさない
- 禁煙する
- ストレスをためない
- 睡眠を十分にとる
糖尿病の食事療法では食べる順番・速さを考えることも大事

糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法の3本柱が基本です。
食事療法は糖尿病治療の基本なので下記を心がけて規則正しく食べることが重要です。
2024年に改訂された「糖尿病ガイドライン」によると、今回初めて新しい考え方として下記の3点が初めて示されました。1日に必要なエネルギーは一人一人異なるので、主治医の指導に従ってください。
これまで根拠が不十分だった炭水化物の制限ダイエットですが、2型糖尿病患者が6カ月~1年以内の短期間であれば、炭水化物の制限を行うことは有効と示されました。現在では、1年を超えるとさらに病状が良くなるという証明はないので、その後は医師と相談するとよいでしょう。
ただし、自己判断せずに医師や管理栄養士の指導のもと、炭水化物制限を行ってください。
2型糖尿病患者の血糖値の改善には積極的な食物繊維の摂取が有効ということも示されました。炭水化物以外の「糖質が少なく食物繊維が多い食品」を副菜として摂ることで糖質の吸収を妨げ、急激な血糖値の上昇が抑えられるので、しっかり摂るようにしましょう。
筋肉は糖質をエネルギーとして貯める役割があるため、筋肉が減ると糖質・ブドウ糖の消費が減り、結果、血糖値が上がりやすくなります。筋肉の量を維持するためには普段からたんぱく質を摂ることが重要で、筋肉を増やすことが血糖値のコントロールにつながります。
ただし、糖尿病性腎症のステージが上がっている場合は、たんぱく質が負担になることもあるので、医師の指示のもと適切な量を摂取するようにしましょう。
糖尿病の人の食事療法は3大栄養素(炭水化物・たんぱく質・脂質)をバランスよく摂ることです。食事療法のポイントは以下の7つです。
- 腹八分目で抑える(適切な量を守る)
- 食品の種類はできるだけ多く摂取する
- 脂肪の多い食品・油料理は控える
- 食物繊維を多く摂る
- 朝・昼・夜の食事はエネルギー量を均等に
- ゆっくりかんで食べる
- 甘いお菓子を間食で食べない
それ以外に意識することとしては、食べる順番とゆっくり食べることを意識してみてください。おかずの後に主食のごはん・パン・麺を摂る、甘いものは一番最後に食べるようにしましょう。そうすることで血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。

また、上記にも記載しましたが、よくかんで食べることで満腹感を得られます。
糖尿病に良い食べ物は?血糖値を下げる食べ物ランキング
今回、新たに「糖尿病ガイドライン」に加えられた食物繊維は以前は「便通をよくする成分」程度に見られていましたが、近年、食物繊維の健康への有効性が明らかになり、様々な病気予防に役立つ栄養素と認められるようになりました。
糖尿病の症状の改善や合併症予防のためにも積極的に食物繊維を摂るように心がけるとよいでしょう。
下記に、食物繊維を多く含む摂取しやすい食品をまとめたので、参考にしてください。
食品 | 食物繊維の含有量 (100gあたり) |
|
---|---|---|
1 | こんにゃく/凍みこんにゃく | 79.9g/71.3g |
2 | 乾燥きくらげ | 57.4~79.5g |
3 | 粉寒天/角寒天 | 79.0g/74.1g |
4 | ひじき | 51.8g |
5 | 乾燥しいたけ | 46.7g |
6 | おから | 43.6g |
7 | 乾燥まいたけ | 40.6g |
8 | 乾燥カットわかめ | 39.2g |
9 | 刻み昆布 | 39.1g |
10 | 乾燥わかめ | 29.8g |
以上を見ると、きのこ類や海藻類に食物繊維が多く含まれていることがわかります。
その他、食物繊維が多く含まれる食品を下記にまとめたので参考にしてください。
豆類 | あずき・大豆・グリンピース・いんげん豆・納豆・きな粉等 |
---|---|
いも類 | じゃがいも・さといも・さつまいも・春雨等 |
穀類 | 小麦胚芽・ライ麦・大麦・オートミール・そば・キヌア・玄米・黒米等 |
野菜 | ドライトマト・切り干し大根・らっきょう・グリンピース・しそ・ほうれんそう・枝豆・ごぼう・かんぴょう・ブロッコリー・オクラ・かぼちゃ・あしたば・キャベツ等 |
果物 | 乾燥ブルーベリー・干し柿・なつめ・いちじく・すだち・バナナ・ドライマンゴー等 |
飲料 | 煎茶・抹茶・紅茶・青汁(ケール)・ココア等 |
種実類 | チアシード・えごま・ココナッツパウダー・ごま・アーモンド・らっかせい |
食物繊維は急激な糖の吸収を抑えてくれる働きがあるので、日常的に食物繊維を多く摂る人は糖尿病のリスクが低下することがわかっています。穀類といも類は糖質も含まれているので、食べ過ぎは注意が必要ですが、積極的に食物線維を摂るように意識してみてください。

糖尿病におすすめのレシピを紹介
食事療法は糖尿病の基本治療なので、必ず行わなければ症状は改善しないということを認識しておきましょう。
バランスのよい献立を考える場合は、主食(主に炭水化物)・主菜(主にたんぱく質)・副菜(ビタミン・ミネラル・食物繊維)・汁物(不足する食材をプラス)を組み合わせます。なるべく単品で済ませずに副菜を添えるように工夫してみてください。
今回は糖尿病治療に重要な食物繊維がたっぷり摂れる副菜レシピを紹介します。食物繊維は海藻やきのこ類に多く含まれているので、5~10分で作れる簡単な副菜を一品加えてみるとよいでしょう。分量は省きますが、家族の人数に合わせて好きな量で作ってみてください。
キャベツと海苔とえのきのナムル | |
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キャベツはざく切り、エノキは3㎝ほどに切る。耐熱ボウルに入れ、ラップをかけて600Wの電子レンジで3分加熱。海苔・ごま油・すりおろしニンニク・しょうゆで調味する。 |
ほうれんそうと海苔の納豆あえ | |
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ほうれんそうはさっとゆで、水気を切って3㎝に切る。ボウルに入れ、納豆、だし醤油を加え混ぜる。ちぎった海苔をかける。 |
水菜とワカメときゅうりのサラダ | |
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水菜は4㎝に切る。ボウルに入れ、一口大に切ったワカメ、白ごまを加えて混ぜ、好みのドレッシングで調味する。 |
上記の野菜にこだわらず、旬の野菜にワカメやのりなどの海藻、エノキやしいたけなどのきのこ類をプラスすると食物繊維が簡単に摂れるので参考にしてください。
たんぱく質をプラスしたいときは、ゆでたささ身やツナを加えてもよいですが、たんぱく質の量に制限がある方は注意が必要です。
糖尿病の運動療法は食事療法よりも効果がある?

糖尿病の方は運動を習慣として行うことで、血糖値を下げたり、血圧を下げることができ、糖尿病に運動療法は有効です。
とくに、2型糖尿病における発症要因としては肥満・過食・運動不足があり、運動することでエネルギーを消費し、筋肉活動量を上げてインスリン感受性の改善効果が期待できます。
食事療法のみでは改善しにくい症状も、運動療法を組み合わせることで、死亡リスクが40%減るとの論文もあります。
運動療法では、レジスタンス運動(スクワット・腕立て伏せ・ダンベル運動等)と有酸素運動(歩行・ジョギング・自転車等)を組み合わせることが重要です。レジスタンス運動は週に2~3回、有酸素運動は週3回以上でトータル150分以上行うことを推奨しているので、1回50分を目安にしてください。
最初は短い時間でも徐々に増やしていくことで効果はあるので、通勤などの際に1駅分は歩くなど、出来るところから始めていきましょう。
糖尿病で運動しないとどうなるのか、重要性を解説
運動をせずに筋肉が減ると血糖値は上がりやすくなり、糖尿病の症状は悪化すると言われます。
筋肉は糖質の貯蔵庫の役割をしていますが、貯蔵庫がなくなると糖質が貯めにくくなり、血糖値が上がりやすくなるからです。
日本病院総合診療医学会雑誌によると、2型糖尿病治療において食事療法のみでは改善が軽微なところ、運動療法と併用することでリスクが大きく減ることがわかっています。

なお、運動が難しく、座ったままの時間が長い場合には、立ち上がって少しでも体を動かすことが重要です。食後、わずか2分でも歩くだけで効果があるという研究者もいるので、あきらめずに少しでも立って動くようにしましょう。
糖尿病で禁忌の運動や運動のタイミングについて紹介
糖尿病の方の中には、医師の指導のもと制限つきの運動療法を行う、または行ってはいけない方がいます。
- 増殖前網膜症・増殖網膜症の方
血圧の変動により、眼底出血を起こす可能性があります。眼科医との相談が必要です。 - 糖尿病神経障害の方
足の感覚が鈍く、痛みに気がつきにくいので足に負担がかかる可能性があります。 - 自律神経障害の方
症状が高度の場合、血圧や心拍の調整が難しいため、運動が禁止されることがあります。 - 重篤な心血管障害や肺の病気の方
専門医との相談が必要です。 - 糖尿病性腎症3ステージ以降の方
腎臓の負担を減らすため、運動を制限する可能性があります。専門医との相談が必要です。 - ケトーシス状態(尿中ケトン体が中程度以上)の方・空腹時血糖値250mg/dl以上の方
高血糖のときに運動すると症状が悪化する可能性があります。
なお、運動療法で効果を上げるには、適切なタイミングがあります。
血糖値が上昇する食後に運動をすることで、食後の急激な血糖値上昇を抑えることができるので、食後30分~1時間以内に運動を開始するとよいでしょう。食後すぐに動くとお腹が痛くなる方は、無理せずに落ち着いてから行ってみてください。
毎日の生活の中に取り入れ、無理のない範囲で運動を続けましょう。
糖尿病の薬物療法にはどんな種類がある?

2型糖尿病の方で食事療法と運動療法だけでは血糖コントロールが難しい場合、薬物療法が必要になります。
糖尿病の薬物療法は大きく分けて、服薬(経口薬)と注射があり、下記のように経口血糖降下薬には多くの種類があります。症状によって、これらの経口薬を併用することもあり、注射薬と併用することもあります。
種類 | 特徴 | 主な作用 |
---|---|---|
スルホニル尿素(SU)薬 | インスリンの分泌を増やす | インスリン分泌促進 |
速効型インスリン分泌促進薬 | 速やかなインスリン分泌で血糖値の改善 | |
DPP-4阻害薬 | DPP-4の働きを抑え、インスリン分泌促進し、血糖値上昇を抑制 | |
GLP-1受容体作動薬 | GLP-1作用増強によりインスリン分泌促進し、血糖値上昇を抑制 | |
ビグアナイド薬 | インスリンの作用をよくする | 肝臓での糖の生産抑制し、血糖値上昇を抑制 |
チアゾリジン薬 | 骨格筋・肝臓でのインスリン抵抗性改善 | |
α-グルコシダーゼ阻害薬 | 糖の吸収を阻害し、排泄を促す | 腸管での炭水化物吸収分解遅延による食後の血糖値上昇抑制 |
SGLT2阻害薬 | 腎臓でのブドウ糖再吸収阻害による尿中ブドウ糖の排泄促進 |
種類 | 特徴 | 主な作用 |
---|---|---|
インスリン注射 | インスリン作用 | 弱った膵臓の代わりにインスリンを補充し、血糖値の上昇を抑制 |
GLP-1 受容体作動薬の注射 | インスリン分泌促進と食欲抑制 | 膵臓からのインスリン分泌を促進し、食欲を抑制して体重を減少させる |
糖尿病の治療は進歩しており、一人一人の病状に合わせて治療薬を選択できます。
注射も毎日ではなく、週に1回で済むものが発売されたことで負担が減り、選択肢が増えています。
糖尿病の薬の効果や副作用について
糖尿病の薬の作用を上記で説明しましたが、糖尿病の薬は血糖値を下げるだけでなく、合併症を予防したり、体重をコントロールできるようになるなど、様々な効果も期待できます。
糖尿病の薬物療法としてインスリン注射をすすめられる方も多いと思いますが、インスリンは膵臓から分泌されるホルモンで、血糖が高い状態が続くと膵臓が酷使され、やがてはインスリンを分泌できなくなります。
そのため、インスリンを体外から注射することで、膵臓の働きを助け、弱った膵臓を一時的に休める効果が期待できます。
インスリン注射は弱った膵臓を守るために、体の外から注射でインスリンを補充する治療です。

インスリン注射は膵臓の機能を温存させるため、早期から始める場合もあります。糖尿病の合併症を予防するための選択肢と考えてもよいでしょう。
一方で、糖尿病の薬で気をつけなければならないのは副作用です。最も起こりやすい副作用は低血糖です。低血糖とは薬の影響で、必要以上に血糖が下がった状態(70mg/dl以下)ときに生じる症状です。
低血糖は食事を抜く・少量にするなどした場合に、薬が効きすぎて起きる症状です。重症になると意識を失い、昏睡やけいれんを起こすこともあるので、低血糖の症状が起きた場合に対処してもらうように周囲にも伝えておくとよいでしょう。

意識があり、症状に気がついた場合はまずは安静にし、ブドウ糖やブドウ糖を含む飲料を摂取しましょう。
低血糖以外の副作用としては、経口薬のSU薬やチアゾリジン薬を服用した場合に体重増加する可能性があります。
また、糖尿病の薬の他に薬を服用している場合、飲み合わせが悪く、糖尿病の症状が悪化することがあるので、服用している薬がある場合には事前に医師に相談してください。
インスリン注射を始めたら、一生続けなければいけない?
「インスリン注射を使うと飲み薬には戻せないのではないか」と不安になる方が多いようですが、2型糖尿病の方は、早期の治療により血糖値が正常になればインスリン注射をやめることが可能です。ただし、インスリン注射を中止できるかどうかの判断は自己判断せずに医師の指示のもと慎重に行うべきでしょう。
インスリン注射をやめて、再び血糖値が上がってきた場合に、再開する方もいるので、膵臓の機能の状態や肥満の有無、食事や運動などの生活習慣なども含めて、主治医とよく相談し、ライフスタイルに合った治療法を選択することが大切です。
2025年の厚生労働省の発表によると、日本で糖尿病の治療を受けている患者数は552万人を超えており、年々増えています。日本人は欧米人と比べるとインスリンの分泌能力が低く、肥満・運動不足・ストレスなどにより2型糖尿病を発症しやすい体質です。そのため、軽度の肥満でもインスリンの働きが悪くなり、糖尿病を発症しやすくなります。
しかし、糖尿病の医療や研究は大きく進歩しており、食事・運動・薬物療法を行うことによって、薬が不要になる寛解状態の方もおり、改善することが可能な時代になっています。
糖尿病治療は人によって異なるため、主治医と相談しながら、最適な治療計画を立てることが大切です。早期の治療・定期的な受診・生活習慣の見直しが、糖尿病を寛解状態にすることにつながるので、気になる検査数値や症状がある方は、早めに受診してください。