バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の症状や治療薬を解説!原因や顔つき・なりやすい性格は?
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とはどんな病気か?
バセドウ病でよく言われる「顔つき・暑がり・痩せる」などの症状や原因、なりやすい人の特徴のほか、治療薬や手術などの治療法と治療にかかる費用なども解説します。
バセドウ病に関する詳細な情報をまとめているので参考にしてください。
- バセドウ病の症状・原因
- バセドウ病の治療法と治療費用
- バセドウ病の治療期間と完治について
- バセドウ病の寿命と放置した場合
- バセドウ病で妊娠を希望する場合
- バセドウ病でやってはいけない事・食べてはいけないもの
- バセドウ病のよくある疑問
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とは?
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)とはどんな病気か、特徴と発症率を解説します。
グレーブス病や橋本病との違いも紹介しているので、確認してみましょう。
甲状腺機能亢進症の特徴を解説!バセドウ病とグレーブス病との違いは?
「バセドウ病」とは、甲状腺ホルモンが過剰に作られる「甲状腺機能亢進症」の代表的な病気です。
甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールする重要な役割を担っていますが、甲状腺が自己免疫によって過剰にホルモンを分泌することで、体中の臓器に負担がかかるのが特徴です。
また、「バセドウ病」は、別名「グレーブス病」とも呼ばれており、呼び方に違いがあるものの、同じ病気を指しています。
グレーブス病は、1835年にアイルランドの医師「ロバート・グレーブス」が研究発表したことで、欧米では「グレーブス病」と呼ばれることが一般的です。
一方でバセドウ病は、1840年にドイツの医師「カール・フォン・バセドウ」が研究発表しており、明治時代にドイツ医学を取り入れた日本では歴史的背景によって「バセドウ病」と呼ばれています。
どちらも同じ疾患で医学的な違いはなく、検査方法や治療方法なども同じです。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の発症率や男女比
バセドウ病の患者数は、人口1,000人あたり0.2~3.2人とされており、特に20代~30代の女性に多く発症すると言われています。
また、男女比では1:3~5ほどと言われており、男性より女性の方が3~5倍多いとされています。
バセドウ病と橋本病の違いは?併発するのか解説
バセドウ病と橋本病は、どちらも甲状腺に起こる自己免疫疾患ですが、その病態や治療方針は大きく異なります。
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に作られるため代謝が異常に活発になる「甲状腺機能亢進症」です。主な症状として、動悸、発汗、体重減少などがみられ、治療には甲状腺ホルモンの産生を抑える抗甲状腺薬などが使用されます。
一方の橋本病は、甲状腺ホルモンが不足し代謝が低下する「甲状腺機能低下症」です。疲れやすさ、寒がり、体重増加などの症状が特徴で、治療には不足したホルモンを補うための甲状腺ホルモン薬が処方されます。
このように、両者は自己免疫疾患でありながら、症状や治療法は正反対の特徴を持っていますが、まれにバセドウ病から橋本病、あるいは橋本病からバセドウ病へと病態が移行するケースも報告されています。
そのため、定期的な甲状腺機能の検査を受け、症状や検査結果の変化に応じて、医師と治療方針を見直すことが重要です。
バセドウ病の症状は?顔つきや初期症状もチェック
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで全身の代謝が活発になり、身体のあらゆる臓器に影響を及ぼす疾患です。
そのため、症状の現れ方は非常に多彩で、初期段階では見逃されやすいこともあります。早期発見・早期治療のために、代表的な症状を確認しておきましょう。
顔つき(眼球突出)や首の腫れなどバセドウ病の主な症状一覧
バセドウ病では、全身の代謝が過剰に働くため、さまざまな臓器に症状が現れます。
| 全身症状 | 疲れやすい、だるい、暑がり、体重減少、体重増加、微熱 |
|---|---|
| 精神症状 | イライラする、集中力の低下、不眠、落ち着きがない |
| 皮膚症状 | かゆみ、皮膚が黒ずむ、発汗、脱毛 |
| 循環器症状 | 動悸、頻脈、むくみ、息切れ、心房細動、心不全 |
| 消化器症状 | 口渇、食欲亢進、食欲低下、軟便、排便回数の増加 |
| 筋骨症状 | 筋力低下、骨粗鬆症、脱力感、周期性四肢麻痺(男性のみ) |
| 顔つき | 目つき・顔つきの変化、眼球突出、複視、眼瞼後退 |
| 月経異常 | 月経不順、無月経、不妊 |
| 血液検査の異常 | コレステロールの低下、血糖上昇、血圧上昇、肝機能障害 |
このように、バセドウ病は全身にわたって多様な症状を引き起こすのが特徴です。
中でも古くから「メルゼブルグの三徴」と呼ばれる、代表的な3つの症状があります。
これら3つの症状は「メルゼブルグの三徴」と呼ばれ代表的な症状ではありますが、3つ同時に現れるとは限りません。
現れる症状は年代によって異なり、若い方では甲状腺の腫れが目立ち、食欲増進で体重が増える傾向があるのに対し、高齢者では甲状腺の腫れが分かりにくく、体重減少が顕著に現れることが多いです。
男性に特徴的なバセドウ病の症状としては、周期性四肢麻痺があります。
これは暴飲暴食(特に炭水化物やアルコールの大量摂取)や激しい運動の翌朝などに、突然手足が動かなくなる発作です。血液中のカリウムが急激に低下することで起こり、アジア人男性に多いことが報告されています。
暑がり・痩せる・動悸などバセドウ病の初期症状
前述のようにバセドウ病の症状は多くありますが、初期症状としては以下があります。
- 周囲の人より暑がりになり、汗をかきやすい
- 食欲があるのに体重が減る※食べ過ぎにより体重が増加する場合もあり
- 安静時でも動悸を強く感じる
- 手の震え、疲れやすさ、落ち着かない、イライラする
これらの症状は、ストレスや更年期障害、貧血などと誤認されることもありますが、複数当てはまる場合は甲状腺機能の検査を受けることが大切です。
バセドウ病(甲状腺機能亢進症)の合併症に注意
バセドウ病では、適切な治療や管理が行われない場合、重い合併症を引き起こす可能性があります。
これらのほか、甲状腺眼症があり、進行すると視力障害や角膜の損傷(角膜潰瘍)を引き起こすこともあるため、早期の段階で医師に相談し、眼の炎症をコントロールすることが大切です。
バセドウ病の合併症は、症状によっては命に関わるものもありますが、多くの場合は予防が可能なため、定期的な通院と医師の指示に基づき治療を継続することが大切です。
バセドウ病になる原因は?なりやすい人の特徴
バセドウ病は発症すると多くの症状が現れる病気ですが、どのような原因で起こるのでしょうか。ここでは、バセドウ病を発症する原因やなりやすい人の特徴をまとめているので、参考にしてみてください。
バセドウ病の原因は遺伝・ウイルス・食べ物?発症するメカニズムを解説
バセドウ病は「自己免疫疾患」と呼ばれる病気の一つで、免疫の異常によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで発症します。
通常、甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から甲状腺刺激ホルモン「TSH(thyroid stimulating hormone)」が、甲状腺濾胞(ろほう)細胞の「TSH受容体」を刺激することにより分泌されています。
しかし、本来体を守る免疫機能が誤って働き、「TSH受容体」に対する自己抗体「TRAb/TSAb」を作り出してしまいます。そして、作られた「TRAb/TSAb」が「TSH受容体」を常に刺激することで、甲状腺ホルモンが過剰に産生・分泌され、バセドウ病を発症します。
なぜ自己抗体が作られるのか原因は明確に分かっていませんが、遺伝的要因と環境要因の両方が関係していると考えられています。
そのため、家族にバセドウ病や甲状腺の病気がある場合、発症リスクがやや高いと報告されていますが、遺伝的な体質があっても必ず発症するわけではなく、ウイルス感染症や強いストレス、妊娠・出産、喫煙、外傷などの環境要因が引き金となって発症するケースが多いとされています。
また、食べ物が直接の原因となることはありませんが、ヨウ素(海藻類など)の摂りすぎは甲状腺の働きに影響する場合があるため、摂りすぎには注意が必要です。
バセドウ病になりやすい性格はある?
「バセドウ病になりやすい性格がある」という医学的な根拠はなく、性格そのものが発症の原因になることはないとされています。
ただし、強いストレスがバセドウ病の発症や悪化に関わっていることから、ストレスを抱えやすい傾向がある性格の人は注意が必要です。
例えば、完璧主義で責任感が強い人、自分に厳しく周囲に気を遣いすぎる人は、知らないうちにストレスをためやすい傾向があります。
また、仕事や家事を優先して休息を取らない人、睡眠時間を削ってしまう人も心身に負担がかかりやすくなります。
ストレスがバセドウ病の発症に関与していることからも、リラックスできる時間を意識的に作る、しっかり休む、趣味や運動で気分転換するなど、自分に合ったストレスとうまく付き合う方法を見つけることが大切でしょう。
バセドウ病は何科を受診する?検査と診断方法
バセドウ病が疑われる症状(動悸・体重減少・手の震え・暑がりなど)がある場合は、早めに専門の診療科を受診し、正確な検査・診断を受けることが大切です。
ここでは、受診すべき科や検査の内容について詳しく解説します。
バセドウ病で病院を受診する際の診療科
バセドウ病の診断・治療を専門的に行うのは「内分泌内科」または「内分泌代謝科」ですが、甲状腺疾患を専門に扱う「甲状腺専門クリニック」もあり、精密検査や専門治療を受けたい場合に適しています。
内分泌内科がない地域の医療機関では、「一般内科」でも初期診察や必要な血液検査を行うことも可能です。
もし、かかりつけ医がいる場合には、まずは相談し、必要に応じて専門医を紹介してもらうのがよいでしょう。
総合病院や大学病院には、内分泌内科が設置されていることが多く、検査機器や治療体制が整っているため、精密検査が必要な場合に向いています。
初診時には、症状がいつから始まったか、家族に甲状腺疾患の人がいるか、最近のストレスや生活の変化などについて詳しく問診が行われます。
その後、血液検査や甲状腺の触診、必要に応じて画像検査などが実施され、状態に応じて治療が行われます。
バセドウ病を診断するための血液検査の数値
バセドウ病の診断において血液検査は必須となり、主に以下の項目を測定します。
甲状腺ホルモン(FT3・FT4)が正常値より高く、同時に甲状腺刺激ホルモン(TSH)が正常値より低い場合は、甲状腺亢進症が強く疑われます。
さらに、抗TSH受容体抗体(TRAb)と甲状腺刺激抗体(TSAb)が陽性であれば、バセドウ病の診断がほぼ確定となります。
また、バセドウ病では、コレステロールが低値を示したり、アルカリホスファターゼ(ALP)が高値を示すことが多いため、これらの値も診断の補助的な情報となります。
ただし、これらの数値は検査を受けた時点での体調やストレス、服薬状況などによっても多少変動するため、単一の検査結果だけで判断するのではなく、医師が臨床症状とあわせて総合的に評価します。
これらの「臨床所見」と「検査所見」をあわせたうえで、以下の基準によってバセドウ病の診断が確定されます。
なお、甲状腺ホルモンのバランスは治療経過でも変化するため、定期的に検査を行い、ホルモン値を確認することが重要です。
血液検査で判断できない場合は放射性ヨウ素(アイソトープ)検査で診断
血液検査だけで判断が難しい場合には、放射性ヨウ素(またはテクネシウム)を用いたアイソトープ検査が行われます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成に欠かせない微量元素のひとつで、体内に取り込まれたヨウ素は甲状腺に集まるという性質があります。
その性質を利用して、人体に害のない程度のカプセル化した微量の放射性ヨウ素を服用し、ヨウ素をどの程度取り込んでいるかを測定します。
アイソトープ検査でバセドウ病と診断するには以下の特徴が見られます。
なお、検査を受ける際には、検査の7日前からヨウ素を含む食品(昆布、海苔、わかめなど)の摂取を制限する必要があります。
また、妊娠中・授乳中の方に加えて、6ヶ月以内に妊娠を希望している方、パートナーの妊娠を希望している男性は、アイソトープ検査を受けることができません。
アルコール過敏症やその他のアレルギーがある方も検査を受けられない場合があるので、事前に申し出る必要があります。
バセドウ病を診断するためのその他の検査(超音波・心電図など)
バセドウ病の診断には、以下の検査も行われる場合があります。
甲状腺の大きさや形状、内部の状態を詳しく観察するために行われます。
甲状腺の腫れの程度を確認したり、結節(しこり)や腫瘍の有無をチェックしたりするのに有効です。痛みがなく、短時間で終わる検査なので、繰り返し行うことができます。
心拍数や不整脈の有無、心臓への負担などを確認します。
バセドウ病では頻脈や心房細動などの不整脈が起こりやすいため、心臓の状態を把握することが重要です。
心臓の大きさや肺の状態を確認するために行われることがあります。
甲状腺ホルモンの過剰により心臓が肥大していないか、心不全の兆候がないかなどをチェックします。
甲状腺関連眼症が疑われる場合、眼球突出の程度や眼球運動の障害、視力への影響などを専門的に評価する必要があります。
これらの検査を組み合わせて総合的に診断を行い、バセドウ病の重症度や合併症の有無を評価します。
診断が確定した後は、年齢や病状、ライフスタイルなどを考慮して、適切な治療方針が決定されます。
バセドウ病の治療法は?薬や手術など効果や副作用を解説
バセドウ病の治療には、大きく分けて薬物療法、アイソトープ治療、手術療法の3つの方法があります。
多くの場合、まずは抗甲状腺薬による薬物療法から開始しますが、場合によってはアイソトープ治療や手術療法が検討されます。
ここでは、各治療で得られる効果・副作用を解説するので、確認してみましょう。
内服薬チアマゾール(メルカゾール)の効果と副作用
チアマゾール(商品名:メルカゾール)は、バセドウ病治療で使用される代表的な抗甲状腺薬です。甲状腺ホルモンの合成を抑えることで、過剰な甲状腺ホルモンを正常範囲に戻す効果があります。
| 効能又は効果 | 甲状腺亢進症 |
|---|---|
| 作用 | チアマゾールは、甲状腺ホルモンの合成に関与する酵素「甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase)」の働きを阻害し、甲状腺ホルモン(T3・T4)の生成を抑制します。 |
チアマゾールは、年齢や症状、状態に応じて投与量が決定され、治療開始初期は比較的多めの量が処方されます。治療の経過とともに、症状やホルモン値の改善に合わせて投与量が調整され、段階的に減量していきます。
また、甲状腺ホルモンの分泌が正常化した後も、バセドウ病の再発を防ぐために少量を服用する維持療法が行われることがあります。
ただし、チアマゾールは、投与後すぐ効果が現れるわけではなく、甲状腺ホルモンが安定するまでには時間がかかるため、多くの場合約2年程度の長期服用が必要とされています。
チアマゾールには以下のような副作用が起こる場合があります。
| 重大な副作用 | 汎血球減少、再生不良性貧血、無顆粒球症、白血球 減少、低プロトロンビン血症、第Ⅶ因子欠乏症、血小板減少、血小板減少性紫斑病、肝機能障害、黄疸、多発性関節炎、インスリン自己免疫症候群、抗好中球細胞質抗体(ANCA)関連血管炎症候群、横紋筋融解症、急性膵炎 |
|---|---|
| その他の副作用 | AST上昇、ALT上昇等、脱毛、色素沈着、そう痒感、紅斑、多形紅斑等、悪心・嘔吐、下痢、食欲不振等、頭痛、めまい、末梢神経異常等、発疹、蕁麻疹、発熱等、こむらがえり、筋肉痛、関節痛、好酸球増多、CK上昇、倦怠感、リンパ節腫脹、唾液腺肥大、浮腫、味覚異常(味覚減退を含む) |
| 特定の背景を有する患者に関する注意 | ・合併症・既往歴等のある方 ・肝機能障害がある方 ・妊娠中の方 ・授乳中の方 ・高齢者 |
チアマゾールの主な副作用として、発疹やかゆみ、蕁麻疹、肝機能障害、無顆粒球症などが知られています。
特に無顆粒球症は、発熱や強い喉の痛みを伴うことがあり、命に関わる場合もあるため、こうした症状が現れた場合は直ちに服薬を中止し、医師の診察を受けてください。
また、肝機能障害のある方、妊娠中・授乳中の方、高齢者では、使用にあたって特に注意が必要なため、該当する場合は、必ず医師や薬剤師に申告し相談するようにしましょう。
内服薬プロピルチオウラシル(チウラジール・プロパジール)の効果と副作用
プロピルチオウラシル(商品名:チウラジール、プロパジール)は、チアマゾールと同じく抗甲状腺薬の一つです。甲状腺ホルモンの合成を抑制し、過剰な甲状腺ホルモンを正常範囲に戻す効果があります。
| 効能又は効果 | 甲状腺亢進症 |
|---|---|
| 作用 | プロピルチオウラシルは、甲状腺ホルモン(T3・T4)の合成に関与する酵素「甲状腺ペルオキシダーゼ(thyroid peroxidase)」の働きを阻害し、ホルモンの生成を抑制します。 また、肝臓や腎臓などの末梢組織で、T4(サイロキシン)からT3(トリヨードサイロニン)への変換を抑える作用もあり、チアマゾールとは異なる特徴を持ちます。 |
プロピルチオウラシルはチアマゾールと同様に、年齢や症状、状態に応じて投与量が決定されます。治療初期は比較的多めの投与量が処方されますが、症状や甲状腺ホルモンの値に合わせて段階的に調整・減量していきます。
甲状腺ホルモンの分泌が安定してすぐに薬を中止すると再発する可能性が高いため、約2年程度の長期服用が必要とされることが一般的です。
また、プロピルチオウラシルはバセドウ病の妊娠にも処方されますが、有益性が危険性を上回ると判断された場合のみ処方されます。
また、授乳中の方にも処方されることがありますが、新生児への影響を避けるために、授乳の継続または中止を検討する必要があります。
プロピルチオウラシルには、以下のような副作用が起こる場合があります。
| 重大な副作用 | 無顆粒球症、白血球減少、再生不良性貧血、低プロトロンビン血症、第Ⅶ因子欠乏症、血小板減少、血小板減少性紫斑病、劇症肝炎、黄疸、SLE様症状、間質性肺炎、抗好中球細胞質抗体(ANCA)、関連血管炎症候群、アナフィラキシー、薬剤性過敏症症候群 |
|---|---|
| その他の副作用 | AST上昇、ALT上昇、脱毛、色素沈着、瘙痒感、紅斑、悪心・嘔吐、下痢、食欲不振、頭痛、めまい、末梢神経異常、発疹、蕁麻疹、発熱、CK上昇、こむらがえり、筋肉痛、倦怠感、リンパ節腫脹、関節痛、唾液腺肥大、浮腫、味覚異常(苦味、味覚減退) |
| 特定の背景を有する患者に関する注意 | ・合併症・既往歴等のある方 ・肝機能障害がある方 ・妊娠中の方 ・授乳中の方 ・高齢者 |
プロピルチオウラシルの副作用として、特に肝障害を起こすことが知られているため、長期的に投与を行う場合には、定期的な肝機能検査を行う必要があります。
また、無顆粒球症についても、メルカゾール同様に注意が必要です。高熱や強い喉の痛みが現れた場合は直ちに服薬を中止し、医療機関を受診することが重要です。
プロピルチオウラシルの副作用のなかには、服用開始から数年後に発症するものもあるため、長期服用中に異常を感じた場合は、医師の診察を受けるようにしましょう。
アイソトープ(放射性ヨウ素)治療の効果と注意したい副作用
アイソトープ治療(放射性ヨウ素内用療法)は、放射性ヨウ素を服用することで甲状腺細胞を減らし、甲状腺ホルモンの産生を抑える治療法です。
アイソトープ治療は、抗甲状腺薬でバセドウ病の症状が治まらない方や副作用が出現した方、甲状腺腫を小さくしたい方、慢性疾患(心臓病・肝臓病・糖尿病等)を持っている方などに推奨されています。
| 効能又は効果 | 甲状腺亢進症 |
|---|---|
| 作用 | ヨウ素は甲状腺に集まる性質があるため、服用した放射性ヨウ素は甲状腺に取り込まれます。放射線ヨウ素によって甲状腺細胞を減少させ、甲状腺ホルモンの過剰産生を改善します。 |
アイソトープ治療は手術のような痛みを伴わない治療で、外来で放射性ヨウ素が入ったカプセルを1回服用するのみです。
アイソトープを服用してから効果が現れるまでには時間がかかり、以下のような経過を辿ります。
このように、アイソトープ治療は治療開始から1年程度の期間がかかります。
症状や状態によっては抗甲状腺薬を必要とする場合があるため、定期的に通院し甲状腺ホルモン値や症状などの確認が必要になります。
なお、アイソトープ治療を行うにあたり、ヨウ素を多く含む食品(昆布・海苔などの海藻類)や薬(うがい薬)などの摂取制限がされます。
体内にヨウ素が多く蓄積している状態でアイソトープ治療を行った場合、治療効果が得られない可能性があるため、治療を始める1~2週間程前からヨウ素を含んだ食品の摂取や薬の服用は中止します。
| 主な副作用 | 甲状腺機能低下症(寒がり、皮膚の乾燥、便秘、むくみ、体重増加など)、眼症(複視、まぶたの腫れ) |
|---|---|
| 注意が必要な人 | ・18才以下 ・甲状腺眼症が重症の人 |
| 治療ができない人 | ・妊婦または妊娠の可能性がある人 ・近い将来(6ヶ月以内)妊娠する可能性がある女性 ・近い将来(6ヶ月以内)パートナーの妊娠・出産を希望する男性 ・授乳婦 |
アイソトープ治療は、抗甲状腺薬のような副作用はほとんどないものの、治療効果には個人差があり、甲状腺機能低下症の症状が現れる場合があります。
甲状腺機能低下症はアイソトープ治療後、数ヶ月の間に一時的に起こり自然に治るケースもありますが、それ以降に起こった場合には永続的に甲状腺ホルモン薬を生涯にわたり服用する必要があります。
なお、アイソトープ治療後にまれに眼症状が悪化することがあります。
眼症状があった場合には、一般的に眼症の治療が優先されるため、治療前には必ず眼科で詳しい検査を受け眼症状の有無と程度を確認しておきましょう。
また、アイソトープ治療後に眼症状が現れた場合には、ステロイド剤などを用いた治療を行う必要があるため、定期的に眼科を受診することが大切です。
甲状腺の全摘手術(甲状腺摘除術)のメリット・デメリット
甲状腺の手術療法は、甲状腺を外科的に切除することで、甲状腺ホルモンの過剰産生を根本的に治療する方法です。
バセドウ病で手術が適応されるのは以下の人です。
- 甲状腺薬で治りにくい人
- 甲状腺薬で再発を繰り返す人
- 薬物療法で副作用がでた人
- 甲状腺腫が大きい人
- 甲状腺腫瘍がある人
- 眼症がある人
- 早く治したい人
バセドウ病の治療には、薬物療法やアイソトープ治療が主に選択されますが、上記にあてはまる方は甲状腺組織を切除する外科手術が選択されます。
また、早期に妊娠を希望する女性や学業や学校に影響を避けたい小児・学生、専門医がいない離島に済んでいる人、海外への赴任予定がある人などは、外科手術の適応になります。
甲状腺の切除術には、甲状腺組織を完全に切除する「全摘術」と、甲状腺の一部を残す「亜全的術」があります。
「亜全摘術」では、甲状腺の一部を残すことにより術後にバセドウ病の再発リスクが高まるため、現在は再発の可能性がなくなる「全摘術」が選択されることがほとんどです。
甲状腺の全摘術は、ほかの治療法よりも早く確実に治療が効果が得られ、翌日から抗甲状腺薬の服用を中止することができます。
再発がほとんどなくなるため、頻回な通院や検査が少なく済みます。
一方で、甲状腺組織の切除で甲状腺ホルモンが分泌されなくなることにより、甲状腺機能低下症を発症してしまうため、甲状腺ホルモン薬の補充治療が生涯必要になります。
また、甲状腺組織の外科手術は、首の前面を3~5cm程度切開して摘出するため、全身麻酔下で行われ、入院期間が通常1週間程度必要になります。
なお、デメリットのひとつとして挙げている「合併症」にも注意が必要です。
このように、バセドウ病の甲状腺手術には、メリットとデメリットがあるため、担当医から十分な説明を受けて、十分理解したうえで治療法を選択することが大切でしょう。
バセドウ病の治療費は?検査費用や高額医療費について
バセドウ病の治療にかかる費用は、選択する治療法や治療期間によって大きく異なります。
バセドウ病の血液検査費や薬代はいくらかかる?
初診時の血液検査費用は、保険適用で3割負担でおよそ3,000〜5,000円程度が一般的です。超音波検査や心電図検査を含めると、初診時の総額は5,000〜8,000円程度になることもあります。
メルカゾールやプロピルチオウラシルなどの抗甲状腺薬代は、1日3錠服用で月額1,000円程度(3割負担)が目安になります。
また、バセドウ病の治療開始後は定期的な血液検査を行う必要があるため、1回2,000〜3,000円程度(3割負担)の血液検査代がかかります。
アイソトープ治療(放射性ヨウ素治療)を選択する場合は、1回約40,000円前後(3割負担)かかり、治療効果が不十分な場合には、再治療を行うケースもあります。
甲状腺機能亢進症(バセドウ病)の手術費用や高額医療費
バセドウ病の治療で手術が必要になった場合には、手術費用がおおよそ20万円前後(3割負担)が目安で、これに加えて、手術前の検査費や食事代、部屋代なども必要になります。
ただし、医療機関や患者の状態、入院期間、使用する薬剤などによって費用は大きく異なるため、具体的な金額については受診する医療機関に相談してみてください。
また、バセドウ病の治療費が高額になる場合には、「高額療養費制度」を利用できます。この制度では、所得に応じて1か月あたりの自己負担上限額が定められており、上限を超えた分は後日払い戻しを受けられます(マイナ保険証を利用すれば、事前の手続きなく、高額療養費制度における限度額を超える支払いが免除されます)。
例えば、年収約370万~約770万の標準的な所得の方の場合は、自己負担限度額は月額8万円前後になります。
バセドウ病は生命保険(医療保険)はおりる?
バセドウ病の治療で生命保険や医療保険の給付金が受け取れるかどうかは、加入している保険の契約内容によって異なります。
治療で入院や手術を伴う治療を行った場合、多くの医療保険では入院給付金や手術給付金の支給対象となることがあり、バセドウ病の入院・手術でも受け取れる可能性があります。
一方で、既にバセドウ病と診断された後に保険に加入する場合、告知義務があり、バセドウ病については保障対象外となったり、保険料が高くなったりすることがあります。
保険会社や契約内容によって条件が大きく異なるため、給付金の請求を検討する場合は、保険証券を確認するか、保険会社に直接問い合わせてみてください。
バセドウ病は完治(≒寛解)する?治療期間と治療の流れ
バセドウ病の治療では、「完治」というよりも「寛解(かんかい)」という言葉が使われます。
寛解とは、症状が落ち着き、薬の服用を中止しても甲状腺ホルモンの値が正常に保たれている状態を指します。
抗甲状腺薬を1日1錠以下の服用で半年以上甲状腺機能が正常に保たれ、さらにTSH受容体抗体(TRAb)や甲状腺刺激抗体(TSAb)が正常値であれば、「寛解」と判断され薬の中止を検討します。
バセドウ病の薬物療法の治療期間としては、治療開始から約2ヶ月ほどは2週間に1回程度の通院が必要です。その後、病状が安定してくると1ヶ月~3ヶ月に1回の通院に減らして経過を観察します。
症状の改善に合わせて薬の量を少しずつ減らしていきますが、治療期間は一般的に少なくとも2年程度を要するため、医師の指導のもとで根気よく治療を続けることが大切です。
ただし、バセドウ病は治療終了後に再発する可能性があり、再発率は30〜50%程度と決して低くないため、再発した場合には、再度の薬物療法や、場合によってはアイソトープ治療・手術療法が検討されることもあります。
バセドウ病の寿命は短命になる?放置した場合の影響も解説
適切な治療を受けていれば、バセドウ病が寿命に影響することはほとんどありません。
甲状腺ホルモンの値がコントロールされていれば、バセドウ病でない人と同じように日常生活を送り、健康を維持することができます。
しかし、治療を受けずに甲状腺ホルモンが過剰な状態が続くと、さまざまな臓器に負担がかかり、命に関わる合併症を引き起こす恐れがあります。
バセドウ病では、過剰な甲状腺ホルモンにより代謝が過度に活発になり、心臓が常にフル稼働の状態になります。 この状態が長く続くと、「心房細動」や「心不全」などの心疾患を起こすリスクが高まります。
心房細動は心臓の拍動が不規則になる不整脈で血栓ができることがあり、脳梗塞や肺塞栓症を引き起こす可能性があり、いずれも命に関わる重篤な状態になります。
また、心不全は心臓のポンプ機能が低下し、息切れやむくみ、疲れやすさなどの症状が現れ、進行すると生命の危険を伴うこともあります。
「甲状腺クリーゼ」は、感染症や手術、外傷、強いストレスなどをきっかけに、甲状腺ホルモンが急激に過剰となり、全身の臓器が機能不全を起こす状態です。
高熱や頻脈、意識障害、嘔吐、下痢、心不全などの症状がみられます。適切な治療を受けても死亡率は10〜20%程度と報告されており、発症すると集中治療室(ICU)での管理が必要となることもあり、極めて危険な状態となります。
甲状腺ホルモンが過剰な状態が続くと、骨の新陳代謝が過剰に進み骨密度が低下します。 その結果、骨粗鬆症や骨折のリスクが高まり、特に高齢者では大腿骨頸部骨折などの重度の骨折につながることがあります。
このように、バセドウ病は治療を受けずに放置すれば、深刻な合併症を引き起こす可能性がありますが、定期的な通院と医師の指示に従った治療を続けることで、甲状腺ホルモンを正常に保ち、これらのリスクを防ぐことができます。
バセドウ病は治療を継続している限り、寿命や生活の質は健常者とほとんど変わらないといわれているため、体調の変化を感じたときは早めに医師へ相談し、適切な治療を続けることが何より大切です。
バセドウ病で妊娠を希望する場合に知っておくべきこと
バセドウ病は20〜30代の女性に多い病気であり、妊娠・出産と関わる機会も少なくありません。
適切に治療・管理を行えば、バセドウ病があっても妊娠・出産することは十分可能ですが、妊娠を計画する段階から主治医と相談し、甲状腺機能を安定させておくことがとても大切です。
バセドウ病の妊娠中・授乳中の治療と胎児への影響
妊娠を希望する際には、甲状腺ホルモンの値を正常範囲に保つことが最も重要です。
甲状腺ホルモンが高い状態で妊娠すると、流産や早産のリスクが高まるため、妊娠前に甲状腺機能を安定させておくことが勧められます。
また、妊娠前であればアイソトープ治療や手術などで甲状腺機能が寛解してから妊娠する方法もあるため、医師と相談して治療方法を検討するとよいでしょう。
妊娠中のバセドウ病の治療は、主に抗甲状腺薬(メルカゾールまたはプロピルチオウラシル)で行われます。
妊娠初期4~7週にメルカゾールを服用すると、まれに胎児への影響が報告されているため、妊娠が判明した時点でプロピルチオウラシルへ切り替えるのが一般的です。
ただし、プロピルチオウラシルは長期服用で肝機能障害を起こすことがあるため、妊娠初期を過ぎて安定期に入った段階で再びメルカゾールへ戻す場合もあります。
妊娠中はホルモンの変化によりバセドウ病の症状が落ち着くことも多く、薬の量を減らしたり、一時的に中止できることもありますが、必ず定期的に甲状腺機能を検査し、医師の指示のもとで調整することが重要です。
また、妊娠後期にTRAbやTSAb(甲状腺刺激抗体)の値が高い場合、胎盤を通して胎児の甲状腺を刺激し、新生児の甲状腺機能亢進症を起こすことがあります。
このような場合は、新生児科が併設された医療機関での出産が推奨されます。抗体は出生後1か月ほどで自然に消失しますが、一時的に小児科での経過観察や治療を行うことがあります。
授乳中の対応は、薬の種類によって対応が異なります。
プロピルチオウラシルは母乳への移行が少なく、授乳制限は基本的に不要です。
メルカゾールは少量であれば授乳が可能ですが、服用量が多い場合は授乳の間隔をあけたり、人工乳との併用を検討します。
産後はバセドウ病の悪化・再発に注意
妊娠中はホルモンや免疫の変化によって症状が落ち着くことがありますが、出産後は再び免疫反応が活発になり、バセドウ病が悪化・再発しやすくなります。
特に産後数ヶ月後~1年の間に症状が出やすいため、薬を中止していた場合でも、定期的に甲状腺機能を検査し、必要に応じて治療を再開することが重要です。
育児中は疲労が重なり、自分の体調変化に気づきにくくなることがあります。動悸や発汗、体重減少、倦怠感などの症状が現れた場合は、早めに医師へ相談しましょう。
バセドウ病でやってはいけない事は?日常生活の注意点
バセドウ病の治療中は、日常生活の中で体に負担をかけない工夫が大切です。症状を悪化させないために、以下のポイントを意識しましょう。
激しい運動はバセドウ病の悪化を招く
バセドウ病では、甲状腺ホルモンの過剰分泌により心臓や筋肉が常に活発に働いている状態です。この状態で激しい運動を行うと、動悸や息切れが強くなり、不整脈や心不全のリスクが高まります。
治療によって甲状腺ホルモンの値が安定し、症状が落ち着くまでは、ジョギングや筋トレ、競技スポーツなどの激しい運動は避けて、安定してきたら医師と相談のうえでウォーキングやストレッチ、軽いヨガなどの軽い運動から再開すると安心でしょう。
喫煙はバセドウ病のリスクを高める
喫煙は、バセドウ病の発症や悪化に関係しており、特に甲状腺眼症(眼球突出など)を進行させることが知られています。
また、タバコに含まれる化学物質が免疫機能に影響を与え、治療の効果を妨げることもあります。
そのため、バセドウ病と診断されたら禁煙し、受動喫煙も避けることが望ましいです。
自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来や医師のサポートを利用したり、家族や周囲の協力を得ることも大切です。
ストレスは免疫に影響を及ぼす
ストレスは、バセドウ病の発症や再発、悪化のきっかけになることがあると考えられています。
強いストレスを受けると自律神経やホルモンのバランスが崩れ、免疫機能にも影響を及ぼします。その結果、甲状腺を刺激する自己抗体(TRAbなど)が増加し、甲状腺ホルモンが過剰に産生されて、症状が悪化する可能性があります。
そのため、バセドウ病の治療中は、十分な睡眠をとり、趣味やリラックスできる時間を意識的に設けることが大切です。
疲労感や気分の落ち込みが続く場合は、心療内科やカウンセラーに相談するのも有効です。
出血を伴う医療処置に注意
抗甲状腺薬のメルカゾールやプロピルチオウラシルには、まれに血液の成分に異常が起こり、出血しやすくなる副作用があります。
バセドウ病の治療でこれらの薬を服用している場合は、抜歯や手術など出血を伴う処置を受ける際には、必ず医師や歯科医に服薬中であることを伝えてください。
また、血が止まりにくい・あざが増えた、歯茎から出血するなどの異変があれば、すぐに主治医へ相談しましょう。
バセドウ病で食べてはいけないもの・おすすめの食事
バセドウ病の治療中は、食事内容にも注意が必要です。
特定の食品は甲状腺機能に影響を与えたり、症状を悪化させたりすることがあるため、適切な食事管理を心がけましょう。
ヨウ素を含む海藻類・魚介類・乳製品などは特に注意!
ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料ですが、過剰に摂取すると症状悪化や治療効果の低下を招くことがあります。
特に昆布はヨウ素を非常に多く含むため、海藻類は控えめにすることが推奨されます。
また、ヨウ素は食材以外にも、うがい薬や消毒薬、一部のサプリメント、市販ののど飴、風邪薬などに含まれる場合もあります。
ヨウ素を完全に避ける必要はありませんが、成分表示を確認し、主治医や管理栄養士と相談しながら、バランスよく摂取することが大切です。
コーヒー・チョコレート・アルコール・刺激物などにも注意
代謝が亢進しているバセドウ病では、カフェイン、糖質、アルコール、刺激の強い食品は症状を悪化させる可能性があります。
バセドウ病の治療中は、食事や飲み物に注意することが症状管理のポイントです。
カフェインやアルコールを含む飲み物、唐辛子などの刺激物は、動悸などの症状を悪化させたり、抗甲状腺薬による肝機能障害のリスクを高めたりする可能性があります。
また、大豆製品は過剰摂取により甲状腺機能に影響を与えることがあるため、摂りすぎには注意が必要です。
さらに、高脂肪食品や加工食品も代謝に影響を与える場合があるため、控えめにしましょう。
過剰摂取はバセドウ病の症状や治療効果に影響を及ぼすおそれがあるため、どの食品も適量を意識し、バランスのとれた食生活を心がけることが大切です。
バセドウ病におすすめの食べ物と水分補給の重要性
バセドウ病の治療中は、栄養バランスの取れた食事を心がけ、体力を維持することが大切です。
以下のポイントを意識して、毎日の食事に取り入れてみてください。
食事内容に不安がある場合は自己判断せず、主治医や管理栄養士に相談して栄養バランスを整えるといいでしょう。
バセドウ病についてよくある疑問
バセドウ病に関してよくある質問をまとめたので、治療や日常生活の参考にしてください。
バセドウ病は他人にうつる病気ですか?
バセドウ病は、ウイルスや細菌による感染症ではないため、他人にうつることはありません。家族や友人、職場の同僚と接触しても感染する心配はないので、普段どおりの生活を送ることができます。
ただし、家族の中にバセドウ病や甲状腺疾患の方が多い場合は、遺伝的な体質が関係している可能性があります。
もし、動悸や体重減少などの症状がある場合は、早めに医療機関で検査を受けましょう。
バセドウ病で運動の再開はいつできる?
運動の再開時期は、治療を始めて甲状腺ホルモン値が正常範囲に安定し、動悸や息切れなどの症状が落ち着いてきたら軽い運動から少しずつ再開できます。
目安としては、治療開始から数か月ほどで軽い散歩やストレッチが可能になり、半年〜1年ほどで通常の運動に戻れることが多いとされています。
無理をすると再発や悪化につながることがあるため、運動を始める際には必ず主治医の許可を得てから再開するようにしましょう。
バセドウ病で温泉に入るのは問題ない?
基本的にバセドウ病の方が温泉に入ることは問題ありませんが、以下の点に注意が必要です。
また、温泉旅行を計画する場合は、事前に主治医に相談して体調を整えてから出かけると安心です。
バセドウ病で休職することはできる?
バセドウ病の症状が重く、仕事を続けることが難しい場合は、休職が可能です。
休職は、加入している健康保険に申請することで、傷病手当金を受け取りながら治療に専念することができます。
傷病手当金は、病気やけがで働けなくなった際に、給与の約3分の2が最長1年6か月間支給される制度のため、バセドウ病の症状が辛いときは休職も検討してみると良いでしょう。
バセドウ病は障害年金の対象になる?
バセドウ病自体は、基本的には障害年金の対象とはなりません。
ただし、日常生活や仕事に支障をきたす重篤な合併症がある場合は、障害年金の対象となる可能性があります。
障害年金の申請には、初診日から1年6か月以上経過していることや、一定の保険料納付要件を満たしていることなどの条件があります。
また、医師による診断書や障害の程度を証明する書類が必要です。
申請を検討する際は、まず主治医に相談し、社会保険労務士や年金事務所に問い合わせるとよいでしょう。
バセドウ病の症状がある場合は検査・治療を検討【まとめ】
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで全身にさまざまな症状を引き起こす「甲状腺機能亢進症」の代表的な病気です。
バセドウ病の症状には、動悸、体重減少、手の震え、暑がり、疲れやすさなどがあり、放置すると心臓や骨などに深刻な影響を及ぼすことがあります。
バセドウ病の治療には、抗甲状腺薬による薬物療法、アイソトープ治療、手術療法の3つの選択肢があり、患者さんの年齢や症状、ライフスタイルに応じて最適な方法が選ばれます。
治療期間は長期にわたることが多いですが、甲状腺ホルモンが安定すれば寛解と判断され薬の中止も検討できるため、医師の指示に従い根気よく続けることが大切です。
バセドウ病は、適切な治療を受けることで症状をコントロールし、健康な生活を送ることが十分可能です。もしバセドウ病が疑われる症状がある場合は、早めに内分泌内科や甲状腺専門クリニックを受診し、検査を受けるようにしましょう。
監修医師
医師・医学博士
崔 正福サイ マサフク
順天堂大学医学部 卒(1995年3月)
担当科目:内科・糖尿病内科
資格・免許:日本内科学会認定医・日本糖尿病学会専門医
診療時間:9:00~12:30/14:00~17:30
受付時間:09:00-17:00 月 〜 金